読書記録 2018
2018年に読んだ全部の本の感想をまとめておきます。有名だけど読んだことないって本をたくさん読めた年でした。順番は適当です。
村田沙耶香『しろいろの街のその骨の体温の』
女子中学生が主人公で、スクールカーストの描写がえげつなかったです。ひたすら辛い事ばかりあり基本的に暗いのですが物語全体の流れとしては少女漫画で、これは荒筋だけ切り取ったら全然印象違うなって思いました。読み進めるほどに地獄のようなラストしか想像できなくなり、苦しくて一気に読めてしまいます。最後にガラガラガラって世界が変わるのですごいです。すごく綺麗です。
中村文則『R帝国』
書いた人すごく頭いいというか、脳みそのキャパでかいなと思いました。とても面白かったしとても怖かったです。来年は『教団X』を読みます。
湊かなえ『未来』
すごく面白いのに道徳の教科書みたいで、良い本だなと思いました。2018年に読んだものの中で一番好きです。
綿矢りさ『かわいそうだね?』
二つお話が入っています。
①『かわいそうだね?』
ヒロインが関西弁でキレる場面が好きでした。怒りと蔑みのこもったタイトルも気持ちがいいなと思います。ハルカトミユキの「絶望ごっこ」という歌にも同じ言葉が出てくるのですが、その部分だけものすごく好きだったことを今思い出しました。
②『亜美ちゃんは美人』
美人な亜美ちゃんの隣でかなり大変な思いをして生きてきた女子が主人公です。読んでいると普通に主人公に同情するし亜美ちゃんかなり厄介だなという気持ちになります。しかし最終的には亜美ちゃん幸せになって、、と切実に思っていたのですごいです。
川上未映子『ヘヴン』
不潔という理由で学校でいじめを受ける女の子が出てくるのですが、読み進めていくと彼女が自分の意思で身体を汚い状態にしていることがわかります。汚さに意味があるという発想が私の中にはなかったので驚きました。
諏訪哲史『アサッテの人』
"アサッテ"という概念が面白かったです。私も"アサッテ"を再現してみたくなりました。理屈っぽさと可愛らしさが両立されているとこが好きでした。
辻村深月『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ』
距離の近すぎる母娘の様子が様々な人の視点から語られ、次第にその関係が気持悪いものに思えてきます。でもタイトルの数字が何を指すのか、二重の意味で明らかになる瞬間に、心臓がぎゅってなりました。いくら他人の目に異質で気持ちの悪いものに映ったとしてもそれはそれで一つの家族の形であり、容易に否定していいものではないのだと感じました。
綿矢りさ『しょうがの味は熱い』
ヒロインの名前が奈世で、可愛いなって思いました。
湊かなえ『花の鎖』
最後、おおお~すごい~~ってなります。鎖という言葉の持つ禍々しいイメージが小説の内容に合っていたので、タイトルもすごい~~って二重に感動しました。登場人物多めで頭の中ごちゃつくのでぼけっとしてるとよくわからなくなります。バカなので何度か前に戻ったりしました。
遠田潤子『雪の鉄樹』
主人公のことが嫌すぎて、読んでいて本当にイライラしました。本を読んでいてここまでちゃんとした嫌悪感を抱くことも珍しいので、すごいです。これはこれで正しい読み方ができたということではないかと思っています。
又吉直樹『火花』
人に優しくないということは面白くないことと一緒だということを主人公が言っていて、たしかにそうだなと思いました。不謹慎だと思うと急に笑えなくなっちゃうので。又吉さんの本を初めて読んだのですが、文章のかんじがとても好きでした。
村田沙耶香『消滅世界』
科学技術が発達し、人々の常識も変化した未来の世界を、恋愛・結婚・出産・家族といった観点から見つめるお話です。自分の子どもという概念が消え、誰の産んだ子も社会に生きる皆の子として扱い出す場面はかなり恐ろしかったです。多様性や個人主義が認められ、従来の恋愛や家族の形が消滅した先にあるのはこんな世界なのかもしれません。「正常ほど不気味な発狂はない。だって、狂っているのに、こんなにも正しいのだから。」という言葉が印象的でした。何を正常とするかなんて時代次第で全然違うし、今の時代の正常にすら違和感を抱く瞬間は誰にでもあるように思います。
角田光代『紙の月』
ものすごい悪意とかがなくても、悪い事って出来てしまうんだろうなと思いました。
百田尚樹『モンスター』
顔の醜い主人公が、整形で綺麗になるお話です。整形はレジャーだと言い切る主人公のことが好きでした。そして、今まで読んだり見たりしてきた本も映画もアニメも、この本の主人公ほどの醜い顔を持った者が存在しない世界でのお話だったのだなと思いました。顔が人並外れて醜いということは、そういう普通の世界から排除されるということだと、このお話を読んでいると感じます。
島本理生『よだかの片想い』
生まれつき顔に大きなアザのある女性の話です。百田さんの『モンスター』を読んで間もない頃に読んでしまったので、ブスよりはアザのほうがましだな、、という浅はかな考えが終始邪魔をして、素直に主人公心理に寄り添うことができませんでした。女性の場合特に、“気持ち悪い”見た目よりも“可哀そうな”見た目の方が生きやすいだろうなって単純に思っちゃうんですよね。生きづらさを相対的に見ておまえは楽だから頑張れって言うのはすごく間違ったことだと思います。ナチュラルにそれをやってしまったことに対し反省です。
でも二つの作品を同じ年に読めてよかったなとは思っています。見た目のせいで生き方を縛られてきたということに関してはどちらの主人公も同じなのに、全然違う解決に向かって行くのが面白かったです。『よだかの片想い』に、「たしかに、人は変わることもある。しかし違う人間にはなれない。それは神の領分です」という言葉が出てきます。『モンスター』の主人公の「神様が生まれながらにして与えた容貌を持って生きろと言っているのだ。私は負けてたまるかと思った。」という言葉と比べて、おお~っとなりました。どちらの言葉も好きです。それが正しいと確信しているとこがいいです。
池上彰『学び続ける力』
教養科目の大切さが強く主張されている本です。専門科目のみの学習では、問題を解く力は身につくが、問題そのものを設定する力は身につかないという説明には説得力がありました。
湊かなえ『豆の上で眠る』
童話"豆の上でねたお姫さま"をモチーフにしたお話です。この童話がそもそも少し不思議な話で、初めて知ったときにいろいろと疑問に思ったことを、小説の冒頭部分を読みながら思い出しました。
逸木裕『星空の16進数』
ヒロインが二人いるのですが、片方が発達障害白寄りグレーゾーンってかんじの性格で興味深かったです。周囲となんとなくぎくしゃくしてしまう彼女にもう一人のヒロインがしたアドバイスがめちゃめちゃ技術的なことだったので好感が持てました。本人の中身は変わらないまま、コミュニケーション方法の工夫だけで周囲との関係が改善されていく様子は、実際に困っている人の心を軽くしてくれるものではないかと思います。正しい解決方法だと思います。
玄侑宗久『龍の棲む家』
認知症の父と暮らす男性の話です。介護する側が認知症患者の世界に合わせ、様々な人間を演じる様子が印象的でした。介護とは思いやりも想像力も機転も体力も必要な行為なのだと改めて認識しました。
川上未映子『乳と卵』
文体が冗長だったり暴力的だったりして、振り切り加減が好きでした。読んでいて清々しかったです。超機嫌悪い時でも無理せず読めそうな感じがします。
綿矢りさ『私をくいとめて』
好きな男の子からのメールに含まれている細やかな気配りをちゃんと感じ取れる主人公のことを偉いなと思いました。
川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』
3つお話が入っているのですが、中でも『シャンデリア』というタイトルのお話が好きでした。気持ち次第で抜け出せる今の状況を気持ちのせいでどうしても自分の力では抜け出せないってのを毎日繰り返してる女の人が出てきます。見ていてすごく辛かったし、本当にそういうものなんだろうなと思いました。
湊かなえ『境遇』
生まれ育った境遇が似ていることから親しくなった友人に対し、境遇が違っていてもこんなふうに友だちになれただろうかと尋ねたいけれど尋ねられない、、みたいな葛藤がたしか小説の中にあった気がします。その気持ちはすごく理解できるなと思いました。人間関係についてもしもを考え出すときりがないです。
浅井リョウ『少女は卒業しない』
卒業式の翌日には廃校となる学校が舞台の短編集です。『ふたりの背景』と『夜明けの中心』が特に好きでした。障害や死といった軽くは扱えないものが自然に描かれていて、変にひっかからずに読めます。まっすぐ内容が入ってくるからこそ、悲しい場面では本当にすごく悲しくなりました。
湊かなえ『白ゆき姫殺人事件』
ばーって読めたしおおーってなりました。単純にすごく面白いです。犯人のことが結構好きです。
辻村深月『名前探しの放課後
ヒロインが、勝てない勝負はしない主義で、運動してるとこは情けなくてかっこ悪いから友達に見せたくなかったんだって話す場面が好きです。それを友達に話せてしまえたところに、目的のために邪魔なプライドを捨てたヒロインの成長が表れていました。
映画、私はまだ見たことがないのですがたぶん結構有名ですよね。登場人物のキャラクターも物語の展開も華やかなので、読んでいるとこれはたしかに映像映えしそう、、って思います。観てみたいです。
湊かなえ『母性』
母性というものに過剰に期待したり、全てを委ねてしまったりするのは危険だと感じました。語り手の個性が強く、激し目の内容なので読んでいて楽しかったです。いきなり物語の中に引きずり込まれるような冒頭部分が好きです。
又吉直樹『劇場』
主人公とその天敵との、メールのやりとりが印象的でした。二人の間では一つ一つの言葉にかける重みがかけ離れていて、その差が歯痒かったです。どんなに懸命に伝えようとしても相手に届かないということがわかってしまうから、悲しかったです。
柚木麻子『BUTTER』
主人公の考えが話の中でコロコロ変化していく様子が印象的でした。人間に対する許容範囲が広い小説なのだと思います。そのおおらかさに励まされました。すごく面白かったです。
三浦しをん『木暮荘物語』
生暖かい温度がある感じの恋愛小説だったので、少し苦手でした。私にはまだ早かったです。文体はとてもサラッとしていてサクサク読めました。万人受けしそうでよいと思います。
綿矢りさ『夢を与える』
結構長めのお話ですが、息をつく間がなくて映画を見ているようでした。たぶん、芸能界という現実離れした特別な世界が舞台だからだと思います。目が離せななったです。どこを読んでいても物語の中に未来に対する不安がずっとあるから、それに引っ張られてこちらもすごく疲れました。これは書いた人もベチャベチャに体調崩しながら書いたんじゃないかと思ってしまうくらい執念!魂!みたいなものを感じました。あと終わり方がブチッてかんじで怖かったです。
川上さんと穂村さんの対談です。川上さんの言葉を読んでいると背筋が伸びます。自分の中にある、邪魔だなという感情が川上さんの中にはないのだということがわかり、すごい人なんだなと思いました。穂村さんは、表現者になりたくて表現者になったと話されていたのが印象に残っています。なんだかとてもうれしかったです。今までも好きだったけれどもっと好きになりました。
村田さやか『地球星人』
けっこうショッキングな内容で、読み終えた時にはどうしよう、、という気持ちになりました。私の常識とはかけ離れているのにあり得なくはないというピンポイントでめちゃめちゃ怖い話でした。村田さんはこんなとんでもない考えを頭の中に持ちながらよく普通に生活できるな、、と思いました。
諏訪哲史『りすん』
ほとんど会話だけで成り立っている小説です。舞台は病院の個室で、入院している女の子と、彼女がお兄ちゃんと呼ぶ大学生がずっと話をしています。物語の中盤、彼らは自分たちの会話が小説であることに気づくのですが、そこからもう普通の小説としてよめなくなるのですごいです。実験的な内容のわりに最後ちゃんと悲しい、切ないという感情を抱いたのが意外でした。『アッサテの人』と同様に理屈っぽさも可愛らしさもあり、全体的にとても好きです。
読んでいると、数字がどれもキラキラした特別なものに思えてきます。名作ってことを知らずに読んだ方が感動できたかもしれないです。
どこからが毒親かって、線引きができないなと感じました。子供のこと、ある程度は守らなきゃいけないけど支配してはいけないって結構難しいと思います。
水野敬也『夢をかなえるゾウ』
普通に笑っちゃうくらい面白かったです。ガネーシャが好きになりすぎて最後はちょっと泣いてしまいました。こんなに楽しく人にものを教えられるお話ってすごいなあと思います。
真梨幸子『6月31日の同窓会』
湊かなえさんの作品がどれも好きなので自分はイヤミスが好きなのかなと思い、イヤミス作家として有名な真梨さんの本を初めて読んでみました。面白かったです。でも読んでいる時に面白いと感じるだけで読んだ後特に心に残るものはないので、少し物足りなかったです。他の作品も読んでみたいです。とりあえず自分はイヤミスが好きなのではなくただ単に湊かなえさんが好きなだけなのだということはわかりました。
綿矢りさ『大地のゲーム』
生きるということへの執着をはっきりと言葉にしていて好きでした。設定も内容も面白かったです。
水野敬也『神様に一番近い動物』
さらっと読めて楽しかったです。