読書記録 2019年1月

この間2018年に読んだ本の感想を一つの記事にまとめたらすごい疲れたので今年のは一月ずつまとめていこうと思います。

 

恩田陸蜜蜂と遠雷

ピアノコンクールのお話。ピアノの演奏という、言葉で表現するのが難しそうなものがきちんと言葉で表現されていて、それがすごすぎて圧倒された。私はピアノやクラシックについての知識がほぼないけれど、とても楽しく読むことができた。演奏中の、現実と想像が入り交じる独特な世界の描写に引き込まれる。読んでいる間こんなにずっとわくわくしていられるような本も珍しいと思う。面白かった。

 

宮下奈都『羊と鋼の森

ピアノの調律をする人たちのお話。自分にとって本当に大切なことだけをきちんと見つめ続ける主人公の姿をずっと見ていたくなる。全体を通して素朴で美しい文章だったのでとても穏やかな気持ちで読むことができた。同じ作者の文章を他にも読んでみたい。

 

湊かなえ絶唱

震災を経験し、生き延びた人たちのお話が4つ入っている。日本が舞台ならもっと暗い雰囲気になっていたのだろうけど、トンガが舞台というだけで少し朗らかだった。トンガという国のすごさを知った。私は災害やボランティアといったものを未だにきちんと理解することができていないので、いろいろ考えながら読んだ。4つ目の話ではヒロインの性格が最後の方で急に大きく変わるので置いていかれた気持ちになったけれど、まあ現実でもそういうことってたぶんあるしなあ、、と一応納得した。

 

又吉直樹『夜を乗り越える』

図書館で借りたやつだけど、読みながら考えることがありすぎて、買うことにした。読んで良かった。又吉さんが太宰治人間失格を初めて読んだときに抱いた気持ちというのが、私が又吉さんの劇場を読んだときに抱いた気持ちと似ていて、嬉しかった。

 

村田沙耶香『殺人出産』

4つお話が入っている。特に印象的だったのは、殺人出産システムが導入された世界を描く『殺人出産』。子を十人産んだ人間には、この国において殺したい人を一人殺す権利が与えられる。たしかに合理的だなと思った。でもそうやって人が殺されてくところを読んでいたらまじで体調が悪くなってしまい、頭ではなるほどと納得していてもやっぱり私には受け入れられない話なのだと身をもって理解した。

 

辻村深月かがみの孤城

不登校の子どもたちが別世界のお城に集められてそこで願い事の叶う鍵を探す話。ヒロインが学校に通えなくなった原因の出来事が、絶妙だった。当事者と、その事実をただ聞いただけの人とでは、なかなか気持ちが噛み合わない。そういう微妙なレベルの困難が取り上げられているところが素敵だと思った。あと、私は個人的に物語の重要な部分で急にファンタジー要素が絡んでくるとなんか納得行かない気持ちになるのだけれど、これは最初から思いっきりファンタジーな設定なのでモヤモヤせずに楽しめた。ラストは普通に感極まって泣いてしまった。

 

湊かなえユートピア

ナチュラルに自己中心的な考えをする人が多く出てくる話だった。自分も含め、人間大体こんなもんだろうなと思う。大人のエゴと子供の純粋さと福祉が合わさってひたすら厄介なことになっていくのが面白かった。最後少しぞっとするとこも含め好きな話だった。

 

湊かなえ『物語のおわり』

北海道を舞台にした短編集。原稿用紙に書かれた短い小説が、一つ一つの物語の主人公たちの間で受け渡されていく。その構成がなんとなく粋な感じで引き込まれた。しかも湊さんの本なのに人が死なない。告白の映画を見て怯えていた私の祖母もこれなら安心して読めそう。最後に明らかになる事実には、なんだ現実ってそんなものかと気が抜けた。人間追い詰められると極端な二択で考えてしまいがちだけどそれ以外もあるんだよと教えてくれる。すごく良い本だと思う。湊さんの小説はジャンキーだから好きみたいなとこもあったから、こういう穏やかでいい話もあるということがわかってよかった。より好きになった。